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田中慎弥『共喰い』へばりつく山口弁と忌み女が最高にイカしてる

共喰い

共喰い

この小説の舞台は山口県だ。登場人物は皆バリバリの山口弁をあやつり、生臭くてどん詰まりの土地に生きている。
私の出身は、なにを隠そう山口県なので、方言に躓くことなく、親戚の人の話を聞くようにすらすらと読めるどころか山口弁を活字にするとこんなんなんか、としみじみしていた。(方言を活字で見るの好き)
ふるさとの訛りなつかし、停車場の人ごみのなかにそをききにゆく。
のごとし。

「生理中の女は神社の鳥居をよけて通る」というならわしがストーリーに効きまくっていて、ああなんて、どろどろなんだろう。
これは、岩井志麻子のどろどろではないか。
(生理中の女を「忌み女」とあらわしましたがこれは鳥居をくぐれないという事実から)

どうしても逃れられない性、と血筋。
そんな男の物語かと思えば、最後は強い女が全部、かっさらってゆく。
喝采。すさまじい。かっこいい。

ああ、私は、どんなに男に体を許しても、結局男の元から消えてしまう女の人が大好きだ。

女の人がとにかく、よかった。
 

私は、著者の田中慎弥さんその人にとても興味があった。
何年か前、この人が出ていた情熱大陸(テレビ番組)を見たとき、彼は新しい作品にとりかかっていた。
その作品は、秋葉原の通り魔事件をモチーフにするらしかった。
なんで秋葉原の事件だったのかというと、「犯人の顔が自分の顔によく似ていたから」と語っていたのを見て私は「この人面白い!!!!」と思ったのだった。
情熱大陸のなかでは、このエピソードしか覚えていないけれど強烈なインパクトだった。