ただ読んだ本を記録していくだけのここ

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波戸賢二郎について、君はいったいどうなりたいんだ『げんしけん』19巻

前巻の感想は下書きのまま、いつのまにか新刊が。
斑目ハーレムはまだ続き、もうオタサークルじゃなくてもええやないかって感じになっていますが私はとっても楽しんでいます。
とっても!楽しんで!!います!!!よ!!!!
私はもう「女装腐男子波戸くんの行き着く先」が見たくてこの漫画を読んでいる!
波戸!キサマはいったいどうなりたいんだ!!

今、げんしけん一行は「朽木の卒業旅行」と称して、栃木の矢島さん実家に皆でお泊まりしている。
波戸とスーはもちろん、大学外の笹原妹、アンジェラもいる。斑目ハーレムになにかしらの決着がつけばいいなとの目論みがこの旅行にはある。
一番先に動いたのは波戸で、「男である自分」を最大限に生かした方法で斑目とふたりきりになる。
が、波戸を引き留めて「ふたりきりの空間」に誘ったのは斑目だった。
ここで、一見は「男同士、腹を割って話そうじゃないか」的な絵面になる(二人とも何かを期待しつつ)。
BL的にはおいしい展開なんだろうけど、これはBLではない。だから不穏。

「男」の状態で斑目との決着をつけようとする波戸は、やはり自分は男なのだから、斑目先輩は自分以外の人を選んで下さいと告げる。
自分の好きなBLはやはり妄想であり現実とは違う。リアルとファンタジーを混同すれば痛いめにあう。
そう!斑目と波戸くんが付き合う先に待っているものはリアルすぎる問題が山積みだ。

私はいま、団鬼六の「美少年」という話を思い出している。

美少年 (JUNEコミックス ピアスシリーズ)

美少年 (JUNEコミックス ピアスシリーズ)

正確には、小野塚カホリがコミカライズしたものを読んだのだけれど、表紙の青年(この子が美少年なんですね。歌舞伎の女形の)が、大学の先輩(男子ですよ)に迫られたときに、「やはり私は男なので幻滅するに決まっている」みたいなことを言っていたんだよ。で、自分は結局脱がないんだよね。いや、触らせない、だったかな、たしか。もうずいぶん前に読んだ本だからたぶん。
波戸が恐れてるのってそういうことだよね?
さて、付き合いましたー、キスまではできるだろうから、キスしましたー、で、脱いでくださいよとなった時、ハードルは一気に上がるよね?
上がりまくって、斑目がやっぱり無理、そんなハードル越せませんわとなった時、その時のショック具合を考えたら死ねるレベルだと思う。(逆の可能性も充分有り得る。波戸が、やっぱり無理ってなる可能性。)
波戸は「醜い現実」と言っていた。
そう。これはBLじゃないぞ。現実だ、つーかげんしけんだ!
それを、斑目はつっぱねてきやがった。
自分を主張してきやがった。自分の正直な気持ちを大切にしてきやがった。
いわゆる「ラッキースケベ」で、ベッドの上に波戸を押し倒す形になった斑目
普通のラブコメであったら、押し倒した男が倒れた女子の胸を揉んでしまうという流れになるのだけど、波戸には肝心の胸がない。ラッキースケベは成立しない
…という波戸な対して「これはBL的に見ればラッキースケベだ」つってさー、
「ヘタレな自分が強引に出られるのは波戸くんだけ」とか言っちゃってさー
いや、ちげーだろ、これは!げんしけんだ!BLじゃねーって私さっきも言ったけど!?斑目!ラメ先輩!
でいつもの朽木の邪魔がはいる、と。ふー、実はげんしけんの良心なんじゃないか?朽木は。

だけど、「一瞬でも受け入れてもらえた」と思う波戸、ヨカッタね。
しかし、波戸もなかなかの遣り手だよなあと思う。
「自分以外を選べ」って…言う?相手に委ねるってとこ、ずるい。
「あなたのためを思って私は身を引きます…でも私は好きですけど…あなたのためだから!」みたいな、押し付けがましさがにじみ出まくりで「うわっ!ヤな女だ!」(男だけど)と思った。
笹原妹の言う通り。
しかしここまで「女」を出してくるのってすごいよな。と思う私。
というか、この旅行ですっぴん+女声+女物パジャマという曖昧な格好まで晒した波戸は、男子の時と女子の時の境界線が曖昧になってきている。
あー、曖昧になってきたな…これは…やはり女のほうが勝っちゃうのか…??
とか思ってたら、笹原妹がまたぶっ込んできた。
波戸を考えるときに、矢島さんという女子の存在を忘れてはならない。
矢島さんは、唯一といっていいほど、波戸を「男」として認識している女子だ。
そして、波戸に恋心を抱いている純情乙女だ。
その!矢島さんの恋心に気づいた笹原妹(波戸をライバル視している)が!やりやがった!
波戸に、「矢島がお前のこと好きだってさ」って言っちゃうんだ!
だーーーーー!!
波戸!お前は、女の子が好意を寄せる立派な「男」なんだよ!って、
そういう現実を突き付ける。斑目に、一瞬でも受け入れてもらえて、まだハーレムで戦う気満々の波戸に!斑目の動向を気にしているだけのしたたか女子・波戸に!(女子ちがうけどもう女子にしかみえない)


ああ、波戸に興味がない人はどういうふうに現在の「げんしけん」を楽しんでいらっしゃるのか超しりたい。
私、アンジェラがどうとかもう全然見てないし。
あの服(表紙の、乳バンドスタイル。乳バンドとしか言えないくらいのあまりにもな乳バンド)も「腹が冷える!!」くらいにしか思ってなくて、なんだかハーレム自体はあまり楽しめていない。

私が、波戸どうなりたいんだって気になるのは、矢島さんの存在もかなり関係している。

前巻では、波戸くんが漫画を描いて、それに対抗するように、矢島さんはほとんどヤケクソで漫画を描いた。
それをサークルのみんなに見てもらうんだけれども、なんと圧倒的画力のある波戸漫画(ストーリー漫画)よりも、下手な矢島漫画(ギャグ漫画)の方が大いにウケたのだった。
そのことが、ふたりの関係を一新させた。
矢島さんは、漫画を描くうえで、波戸と同じ土俵に立てた。
ふたりはとてもいい関係になった。
このエピソードがとても好き。
矢島さんがんばれって思うので、だから波戸どうなりたいんだってすごく思うのでした。