よしながふみ 大奥11巻
よしながふみの漫画は、怖いと思う。
この巻ではっきりと浮き彫りになった徳川治済の怖さっていうのは尋常じゃない。人の命は塵芥のごとく。サイコパス…?
治済の息子・将軍家斉の正室茂姫が力説した「我が子や孫のことをかわいくない女などいるわけがありませぬ」は治済には当てはまらず、自分の子を治済に殺された茂姫は「治済公は御子を間引いているのですわ そう!!気に入らぬ子を間引いているのです!!」と思い込むのだけど、ところがどっこい、治済は、「退屈しのぎに豚の子のように生まれる家斉の子を適当に間引くのも容易すぎて…生きるとはなんとむなしい事…」とか思ってしょげているのである。
気に入らない子を間引いているのはなく、適当でした。怖い!
また、さらに怖いなーと思うのは、茂姫が「我が子をかわいくない親などいない」と明るく言っていたシーン、なんだか茂姫(と家斉)がおめでたい人みたいに描かれていること。
治済との対比のためだと思うのだけど、うっわ、能天気だなーと思った。うまく言えないけど、この能天気さも怖いなと思う。
世の中には子殺しなんてザラにあるし、自分の子だからって無条件に可愛いって思えるのがあたりまえっていう思想は怖い。
よしながふみの漫画は、ほかのも怖いと思う。
「愛すべき娘たち」に出てくる、「人を分け隔てないこと」を信条に生きてきた女性が、「恋をするってことは、人を分け隔てるということだ」と気づいて結婚することを諦め、修道院に入ってしまう話とか、怖いと思った。
「西洋骨董洋菓子店」の橘の誘拐エピソードも怖いし、その橘が犯人を捕まえた、誘拐事件もとても怖かった。
話はそれるけど、よしながふみの対談集で、萩尾望都が私とおんなじように「怖い」と言っていたところがあって、キャッ、っと嬉しかった。
あのひととここだけのおしゃべり―よしながふみ対談集 (白泉社文庫)
- 作者: よしながふみ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2013/04/26
- メディア: 文庫
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この対談集めっさおもしろい。
話は飛んだけど、松平定信かわいいよね!クソまじめなところがかわいい。