ただ読んだ本を記録していくだけのここ

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入江喜和 たそがれたかこ1巻

バツイチ45歳、ぽやんとしている性格なのでボケてんのかいまいちわからない母親と二人暮らしで社員食堂のパートに通うたかこさんの日常。

若さも楽しみもない。
深夜、布団に入ってからボトボト流れる涙。
ひとり川縁で飲むお酒。
気さくに話しかけてくる人が苦手。
元夫は18歳も年下の女性と再婚した。
色々と干渉してくる母に心のなかで悪態をつく。
もう恋とか、そんな気も起こらない。

そんなたかこさん、深夜ラジオから流れてきた歌に心をわしづかまれる。

きいてください、「部屋とおひさま」。

たかこさんは、思い出す。
子供の頃、友達の輪に入れなかったこと。
学校に行きたくなかったこと。
同級生に敬語をつかってしまうこと。
男子生徒に「要領悪くてブッとばしたくなるわ」と言われたこと。
子供が産まれてからも、うまく友達をつくれなかったこと…

それらがやさしい光に包まれてゆき、たかこさんは泣く。
その歌を歌っているアーティスト、谷在家光一のCDを買うべく、たかこさんは秋葉原タワレコに向かう。
買えた。うれしい。うれしいよね!
たかこさんは谷在家光一に恋をしたのだった。
うれしくて、秋葉原タワレコも好きになった。
谷在家光一くんのことをもっと知りたくなる。
携帯で検索してみたり、DVDをこっそり見たり…
谷在家光一くんは、とてもかっこいい若い子だった。
ときめいて、乙女化するたかこさん。

そんなたかこさんがかわいくて、またなんだか好きなものに出会ってしまったときの止められない高揚感が伝わってきて、とてもうれしくなる。
だけど、45歳という年齢ゆえ、時々覗くたかこさんのネガティブさにもハッとする。

行き詰まった生活に開いたひとつの光。
私もそういうのを延々と探している毎日。
なんていい漫画を読んだんだ私は…


表紙の折り返しにあった、作者の入江さんのメッセージ。
「この漫画を、遠い星を心の支えにしているあなたに捧げます。」
ああ、私が心の支えにしていたのは遠い星だったのか。

(遠い星というのは、人によって解釈が違うと思いますが…)