ド・ローラ節子が語る バルテュス 猫とアトリエ
夫に娘をまかせ、ひさびさの全くのひとり、になった私が真っ先に出かけた先は、京都市美術館で開催中の「バルテュス展」であった。
バルテュスの絵は、初めて見たとき「うっわ、エッロ」と思って覚えた。
本物を見たかった。しかし家族で行けっかよ。
人生においての「うっわ、エッロ」という印象は強烈である…と思う。
手塚治虫、つげ義春、諸星大二郎、石ノ森章太郎、わたなべまさこ、これらの漫画は母の本棚に並べられていたのだけど、まあ読むよね。そして読んだ子供の頃の私は「うっわ、エッロ」と思うわけで、この印象はかなり、後々の人生に影響を与えている、と。
まあいいや。こんなことはどうでもいい。
まあ、バルテュスの絵は本物で(当たり前やん)、でっかくて、あ~、バルテュスって生きてたんだなあ~とかそんなつまらん感想しか持てなかったのだけど、私は絵、というより「バルテュス本人」にグワッ!!と惹きつけられた。
バルテュス超かっこいい!!
展示の最後に、バルテュス本人、アトリエの様子、田舎にある自宅、奥さんの節子さん、などの写真がバルテュス愛用の品々と共にババンと並べられていた。
そこに写っているすべてが、素敵だったのだ!!
バルテュスはすごいおじいちゃんであるけれども和服を着こなしいてかっこよく、アトリエの様子は、おいおいこれ、まんまジブリの世界じゃねーか(ジブリの世界に憧れる私)と思うほど雰囲気があり、そこに横たわるモデルの少女、やはり少女なんだけどバルテュスの指示通りのポーズをとっているのでかなり扇情的、それを見つめるおじいちゃんバルテュス、全てがまぶしく、おとぎ話の世界のようだった。
写真だけではなく、「ジョルジュ・バタイユの娘と恋仲だった」とか、「勝新太郎と親交があった」とか、もう私のミーハー心をバシバシ刺激してくるのだった。
やっぱり、違うな、住む世界が、違うわ、って、ただただ単純に憧れた。
それで、私が一番ウットリしたのは、日本人の奥さん・節子さんとの諸々であった。
バルテュスが50幾つくらいのときに来日した折、20歳の大学生だった節子さんを見初めるの。
そして、バルテュスはすぐさま節子さんを絵のモデルにしてデッサンした。
そのデッサンは展示されてあった。バルテュスの描いた20歳の節子さんは、可憐で美しく、私は「バルテュスの野郎…」と思った。素敵な絵だった。
出会ってから5年後に、ふたりは結婚したのだとか。
私は親子ほどの歳の差がある恋愛に対して、なんとなくグロテスクなものを感じているのだけど(すみません偏見ですすみません)、このバルテュスと節子さんの出会いや結婚は、とても美しい物語となって、私の中に存在することに。ステキ…うっとり、って。
そんなふうに、私はバルテュス展で感動したので、どうにかこの感動を持ち帰りたい、と物販コーナーを物色しまくり、ポストカードは買うとして、図録ではないし…と考えていたらこの本が一番しっくりきたのだった。(やっと本のはなし)
写真も絵もたっぷり。
節子さんの書く文章も上品でさっぱりとしていて読みやすい。
勝新つながりで、中村玉緒もバルテュスと親交があったそうで、中村玉緒…うらやましい…