衿沢世衣子 新月を左に旋回
衿沢世衣子の漫画は、「おかえりピアニカ」を読んでから大好きなんだけど、うまく人に面白さを伝えることのできない、どうにももどかしい漫画だ。
絵も、すっごくうまくてかわいいってわけではないし、話も、めさめさ盛り上がるってわけでもない。あらすじなんて、上手く説明できたためしがない。
だけど読んでしまう。読みたくなる、衿沢世衣子の世界に行きたくなる。
この漫画は、中学生のユウコのもとに、幼い少女の姿の「このはずく様」がやってきて、一緒に暮らす、というおはなし。
ユウコのお姉ちゃんが行先不明の留学をして消えた後、やってきた「このはずく様」。お父さんも、「このはずく様」と呼んで、家に迎えている。
ユウコは訳が分からないなりに、このはずく様を「このは」と呼び、一緒に暮らす。
このはずく様は、本当は長く生きて力のある、フクロウの「コノハズク」であるけれども、ユウコは幼い少女の姿をしているゆえに「このは」と呼んで妹みたい接したりする。
最後、お姉ちゃんが戻ってきて、我が家とこのはずく様の関係をユウコに話すのだ。
一瞬、萌え漫画か!とつっこみたくなるような設定。
だけど、そんなんじゃない。
私が、衿沢世衣子の漫画を読んでいて楽しいのは、そこに描かれている「女子たちの学校生活」がとても楽しそうだから、なのである。
物語の始まり、ユウコが自分の部屋で踊る動画をおねえちゃんに勝手にネットにアップされてて、どうしよーー!友達に「お願い消して!」って頼むけど、友達は「もう5000回くらい再生されてるよ」「外人にウケてるよ」などと言って、からかう。
そういった、女学生たちの学校生活。見ていて本当に楽しい。
大体が、色恋沙汰なしで、とても楽しそうなのである。
そこが本当にいい。
惚れたはれた、男子がどうの、そんなものにまみれた青春なんてくそっくらえだ。
あ、でもユウコはお姉ちゃんの同級生の男子にときめいたりしてたな…
でもそれは、あっさりと、壊れてしまった。そんなせつなさも、いい。
あー、上手く説明できない。
「読めばわかるさ」って言うのも、なんか違う気がする。
読んでもらっても、「どこがおもしろいんだ」って反応をする人がいるのもわかるのだ。
むずかしい、でも私は大好きだよってそれだけは公言できる。
文句あっか。