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村上かつら サユリ1号5巻

 

サユリ1号 5 (ビッグコミックス)

サユリ1号 5 (ビッグコミックス)

 

 押見修造「ぼくは麻理のなか」の帯に、「青春地獄」という単語があって、おお、いい単語だなと思った。

で、青春地獄と言えば村上かつらもなかなかの地獄を見せてくれる。

特に「サユリ1号」は、うわあああっ!そこらへんにしておいて!って頭を抱えて逃げ出したくなるような地獄がこれでもか、で、わたしは最終巻の5巻だけが見つからない状態で何年か過ごすというこれまた地獄を味わっていたのです。

 

最近見つけた、最終巻。

もう11年も前の漫画。

舞台は大学。京都の、立命館のような、同志社のような、とにかくエスカレーター式で上がれるシステムを搭載している大学が舞台。

そこに存在している、中途半端なサークルの、中途半端な、イケてるんだかイケてないんだかわからない男どもを狂わせサークルもろとも破滅に導く「サークルクラッシャー」である大橋ユキさんに振り回される人々が描かれている。

 

この大橋ユキなる人物、キャラが濃すぎてポカンとするしかない。本当にいたら戦慄してしまう。

とても美人(ミスキャンパス)でしかしどことなく地味。いつもポニーテール。前髪うすめ。(この前髪うすめ、っていう表現、ものすごいと思う。前髪うすめってダサさと紙一重なんだよね。この表現を使う村上かつらすげえって思ったものよ。)自分がかわいく見える角度を小学校に上がる前から知りつくし、男どもが嬉しがるようなセリフも知り尽くしていて、そしセックス大好き、と来たもんだ。

本当のターゲットの男には思わせぶりな態度をとり、その裏で、その男の親友その他といとも簡単にセックスしまくる…おおこわい。そして気付けばみんな大橋ユキの虜…おお、神よ。

 

女の先輩が、「もー大橋ユキが憎ったらしくて!とおおっぴらに言いづらい所が、大橋ユキの最も厄介な点です!」と言っていたけれど、そう、大橋ユキは厄介な女の子だった。それが、5巻でしみじみとわかった。

そんな彼女と最後まで向き合おうとした主人公のナオヤは、結局向き合えなかった。心を開いてくれそうだった大橋ユキは、結局、同じサークルの男どもとセックスをしていたのだった。分かってた、分かってたけれどもそれを受け入れられるほどナオヤは大人ではなかった、まだまだ、自分がかっこ悪いと思っていた、童貞中学生のままだった。

ナオヤは、ずっと頭の中で描いていた理想の女の子、サユリという幻想を持っていた。サユリは、大橋ユキにそっくりな女の子だ。だから、ナオヤは大橋ユキに舞い上がった。ぞっこんだった。理想の女の子が現実に出てきてくれたのだから。

理想は儚くも打ち砕かれる。

 

大学生、あんなに憧れていた異性とたくさん交流ができる身分になっても、やっぱり異性には理想や幻想を抱いてしまい、そして傷つけられる。

まさに地獄、青春地獄。

 

もうひとり、ナオヤの幼馴染のちこちゃんと言うボーイッシュな女の子が主要キャラで出てくるのだけど、この子はいい子だ、かわいかった。

ボーイッシュでさっぱりしているように見えて、心は誰よりも乙女だった。この子はナオヤが好きだったのだけど、ナオヤに対しての気持ちが乙女だった。

携帯電話にナオヤからの着信。画面には、「上田直哉」と表示されている。鳴り続ける携帯を見つめながら、「…いい名前だなあ…」と思う。乙女。かわいい。

 

5巻と言うか、サユリ1号全体の感想になってしまった。