皆川博子 少女外道
とりあえず、本屋でこの本を手に取った私に喝采を送る。
しかしなんで私は今までこの人の本を発見できてなかったんだろう!!
収録されてる全ての短編がこんなに素晴らしいってのはどういうことだろう。
読み終わった後、しげしげと本そのものを見分してしまった。
なんだこれは、すごいなあ、と。
私の本棚の精鋭コーナーに置く。
自分が「外道」であることを知ってしまった少女、
自分は蓮だと思う少女、
生まれる前から人殺しだったと言われる少女、
解剖道具を欲しがる少女、
死んだことにされた少女、
出征する兵士たちのためにバレエを踊った少女、
手毬の中に入れるために自分の指を切り落とす少女。
たくさんの少女が出てくる、
いつも隣にあるのは、
死、陰、家族の抑圧、戦争、誰にもわかってもらえない自分の世界。
最後はいつも、壮絶、荘厳、虚無、というかんじで終わる。
特に私は「隠り沼の」と「祝祭」の終わり方にゾッとした。
私の知らない、あっちの世界にひっぱりこまれる!!と思った。
そんな世界観、だけど文章というか日本語も凄くて足元がざわざわする。
とくに「祝祭」の最後。
凄まじい落日の一刻に遇(あ)えた。生と死が水平線でせめぎ合っていた。横雲の間から最後の光芒を放ち、空の裾に金紅を孕ませ、陽は沈みつつあった。すべてが闇に浸されていく中で、海と空の境は金泥(こんでい)渦巻く戦場(いくさば)であった。
ここで文章の凄まじさにゾッとして、
華麗な葛藤のはて、残陽は朱の一線で海と空をわかち、静かに没した。そうして、沙子は息を呑んだ。水平線の彼方から渚に向かって一筋、金箔の連なりのように光の帯がのびていた。死への道がかくも荘厳であることを祝(ほが)いつつ、沙子は白い手毬を奉じ、歩み入った。
これであっちの世界にひっぱりこまれる、と。
なんでこんな文章が書けるんだろう。
私はこの人の本を読みまくろう。
佐野洋子も読まなくてはならないし、ああ忙しい。