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綿矢りさ かわいそうだね?

 

かわいそうだね? (文春文庫)

かわいそうだね? (文春文庫)

 

 綿矢りさも大好き。 どの作品も安定して大好き。

これも超面白かった、痛快だった、読んだ後どきどきしていた。


あらすじをかいつまむと、

彼氏に、「元彼女が住むところがなくて困っているから自分の家に住まわせようと思う」と言われた樹理恵(じゅりえ、28歳)は、「はあ?そんなのおかしい!」と思うけど、彼氏が好きなので必死に理解しようとする。

けどやっぱ無理だった。という…

 

こんな、端から見ればめんどくさいだけの男女のいざこざを

主人公樹理恵の感情を的確に表現して

こんなに面白いっていうのは本当にすごい。


「元彼女のことを、恋愛感情はないものの、かわいそうだから、という理由で自宅に住まわせる彼氏」

そして

「元彼氏に彼女がいるにも関わらずその部屋に住むことのできる女」

のふたりを必死になって理解しようとする樹理恵。

「かわいそうな人」を助けてあげるのは当然だ、

だってかわいそうなのだから。

アメリカ帰りのふたりにしたら、知り合いを自宅に泊めることなど日常的なことである、

だから気にすることじゃない、etc…


しかし思いをつのらせ、樹理恵は彼氏の携帯を見てしまうんだけど、

この一般的にはアウトとされている行動なんだけど

「ちょっと樹理恵やめとけそれはあかんて!」って思わなかったからね。

見ろ見ろ携帯!

だって気になるからね。

携帯の中には、元彼女からの「会いたい」だののメールがびっしり。

30女のくせに、このウザい文面のメールは何。
(って私は思った)

 

で、やっぱり最後に彼氏の部屋に突撃して元彼女にキレてしまった樹理恵は

封印していた関西弁を解放してしまうんだけど、そこが最高すぎて何回も読んだ。

「キレる」、まさにその瞬間を迎える場面。

 

どっせい、という言葉が遠くから聞こえてきて耳をすませた。おっさんが怒鳴り散らしているような声だったけれど、よく聞けば自分の声で、だんだん近づいてくる。

どっせい、どっせい、

どないせっちゅうねん、

「どないせっちゅうねん!」

ああ、そうおっしゃってたんですね、あまりに強く、まくしたてられたので、気付きませんでした、お客様もしかして関西のお生まれなんですか?偶然、私もなんですと頭の中で接客しているうちに、私はテーブルの湯呑みを手でなぎ倒していた。

「何が部屋干しや、おまえなんか生乾きのパンティがお似合いや」


引用しただけで高揚できる。

140ページに付箋を貼る。

樹理恵は吉本新喜劇のような関西弁でキレ続ける。帰ってきた彼氏にもキレる。
あはは。

私はやはり方言を活字で見るのが好きだ。

 

綿矢りさの文章が大好き。

何について書かれているかはけっこうどうでもよかったりする。

綿矢りさが書いた文章、ただその事実のみで私は飛び付き読むのです。

阪神大震災の飴のエピソード、火垂るの墓のエピソードもすごくよかった。

 

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作品について|綿矢りさ『かわいそうだね?』|文藝春秋|特設サイト