佐野洋子 シズコさん
四歳の頃、つなごうとした手をふりはらわれた時から、母と私のきつい関係がはじまった。終戦後、五人の子を抱えて中国から引き揚げ、その後三人の子を亡くした母。父の死後、女手一つで家を建て、子供を大学までやったたくましい母。それでも私は母が嫌いだった。やがて老いた母に呆けのきざしが──。母を愛せなかった自責、母を見捨てた罪悪感、そして訪れたゆるしを見つめる物語。
って裏表紙にあらすじがまとめてあったので
内容全てが知りたくなり、借りてくる。
佐野洋子は初めて読むが、すごくおもしろい。
文章がさっぱりしていて、面白い。
「男も女も帽子かぶれり、昭和の初め洋服は大変正しく伝統的であった。」
「しかしあのモボやモガの写真は、何か洋服というものに対して立派である。」
「母さんは神ですか、あの子は兄ちゃんだよ。」
「三面鏡の中にはもう何もない。かすかにお白粉くさい。からっぽなのだ。
母さんの頭の中も三面鏡の引き出しみたいなのですか。」
って、私これ好きだ、な文章がたくさん見つかって、うれしい。
シズコさんは、佐野さんの母親だ。
佐野さんは、ずっと母親が嫌いで触るのも嫌、
と思っていたけど
母親が年をとって、ぼけて、やっと好きになれたのだそうだ。
ありがとうもごめんなさいも、母親から言われたことがなかったという佐野さん。
シズコさんは強烈なお人だったようだ。
私だって、シズコさんが母親だったら嫌だなあという気持ちになるほど。
だけど、ぼけてしまったお母さんと、
自身ももう「おばあさん」と言われる年齢になった佐野さんのあいだには、
かわいくて、穏やかな時間が流れていた、ようだ。
読んでよかった。